北海道南西部、噴火湾は渡島(おしま)半島にぐるっと囲まれた大きな湾です。たくさんの河川から栄養豊富な水が流れ込み、寒流の千島海流と暖流の津軽海流がぶつかる地域のため、噴火湾は非常に豊かな漁場となっています。
主にはアカガレイに代表されるカレイ、高級エビで知られるボタンエビなどの漁や、ホタテの養殖が盛んに行われています。
噴火湾の南西部に位置する八雲町の「噴火湾鮮魚卸龍神丸」の舘岡さんも普段はカレイの刺し網漁を営んでいます。
今年の春、噴火湾で異常事態が起こりました。
これまでは網にたまにかかる程度だったオオズワイガニが大量発生。目的のカレイやボタンエビが獲れないばかりか、網が破られてしまう被害も続出したのです。
6月末ごろ、現地ではオオズワイガニの特売セールが行われ、この事態が各種メディアでも取り上げられるようになりました。
しかし、その報道から3ヶ月たった今でも事態は改善していません。
9月に入り、秋のボタンエビ漁が始まりましたが、やはりかかるのはオオズワイガニばかり。
漁師さんの中には、オオズワイガニを漁獲して一旦水揚げした後で、同じ場所で目当てのボタンエビの漁をする方もいらっしゃいます。結果かかる労力や燃料は倍。こんな状況がいつまで続くのかと漁業関係者は頭を抱えています。
「せっかくカニが大量に獲れるなら今後はカニをメインにしては?」という声も上がりますが、現実はそう簡単にはいきません。
オオズワイガニという名前から大きなカニを想像される方もいますが、今漁獲されるのは200g前後のサイズがメインとなり、市場価値はボタンエビやケガニ、カレイ類に比べられないほど低いものです。
大きく育つまで待てば、という意見もありますが、カニが育つまで収入源が確保できないのは漁師としては死活問題です。
また、今回オオズワイガニが増えた原因について、いくつか説はあるもののはっきりしていません。
1980年にも一度オオズワイガニが大量発生したことがあったそうですが、その際は約1年でいなくなったそうです。
今回もすぐいなくなるかもしれませんし、しばらくこの状況は続くのかもしれません。
それは誰にもわかりません。
漁師さんとしては、まずはオオズワイガニを駆除しないことには自分達の生業である漁が続けられないためどんどん水揚げしたいのですが、ここでも問題が。
たくさん水揚げしても現時点では販路が限られるため、獲り過ぎると捨てる結果となります。
そのため、噴火湾に面した各漁協では1日あたりの漁獲量が制限されているのが現状です。
また、漁師さんが非常に懸念していることがあります。漁獲されるカニのメスの割合がとても高いことです。しかもメスはたっぷり卵(外子・そとこ)を持っています。
ということは今後さらに増加する可能性が高いことが伺えます。
海の底を埋め尽くすオオズワイガニ、特にメスを減らさない限り元の漁ができなくなってしまう、そんな声も聞こえてきます。
日本周辺に生息しているズワイガニの仲間は主にズワイガニ(本ズワイガニ)、ベニズワイガニ、オオズワイガニの3種類。
中でもズワイガニは非常に高値で取引されます。
ベニズワイガニは日本周辺にしか生息せず、ズワイガニに比べるとリーズナブル。
そしてオオズワイガニはこれまで日本では他の2種ほどは流通していませんでした。
では、あんまり美味しくないの?と思いきや、食べてみるととても美味しい!
成長が早いらしいのでその分水っぽいのでは?と思っていましたが、全然そんなことはなく味も濃く舌触りも良い、とても美味しいカニです。
そしてミソの味がとても濃厚。カニの身をミソにつけて食べるとたまりません!
茹でる際は3〜4%食塩水(水1リットルに食塩大さじ2杯)で茹でると美味しくできます。
沸騰した鍋にカニの甲羅を下にして入れ、15分ほど茹でるればできあがり。
また、蒸しても美味しいです。フライパンにクッキングシートを敷き、その上に甲羅を下にしてカニを並べます。
フライパンとクッキングシートの間に水を入れ、蓋をして火にかけ、沸騰したら15分程度蒸したら完成。
蒸す場合はカニの味付けは不要です。
もちろん鍋に入れたり、焼いてもとても美味しく召し上がっていただけます。
メスのカニには外子(そとこ)と内子(うちこ)が入っています。
「ふんどし」と呼ばれるお腹の部分をめくると、オレンジ色のつぶつぶがたくさん付いています。これが外子です。
茹でた外子も美味しいですが、現地では生の外子をめんつゆに一晩漬けてご飯にかけて食べるそうです。
かわうそ市場スタッフも早速やってみましたがこれは絶品!
カニが新鮮なうちにぜひ試してみてください!
そしてメスのカニの醍醐味は内子です。
殻を割るとカニミソの横にひときわ鮮やかなオレンジ色のものがあります。これが内子です。
濃厚な味わいはまさに珍味。日本酒が飛ぶようになくなります。
北陸ではズワイガニのメスのことを「セコガニ」と呼び親しんでいます。
セコガニを食べることはズワイガニの数を減らすことに直結するため、2ヶ月間しか漁が許されていない貴重な珍味ですが、噴火湾のオオズワイガニは漁期の制限はありません。
味はセコガニと違いは無く、内子や外子、ミソや身自体の味わいも絶品です。
今回お届けするのは、雄雌・大きさ無選別で箱いっぱいに生のカニを詰めた商品です。
大きさによって入る匹数も変わりますが、120サイズ箱で20匹前後、100サイズ箱で10匹前後となります。
割合的にはメスの方が多くなります。
内子・外子を持ったメスのカニは一般的に漁獲量を厳しく制限されているのでなかなか食べられない貴重な食材です。
この機会にオオズワイガニを食べて漁師さんを応援しませんか?
「カニが大量発生して大変らしいから力を貸してあげてほしい」そんな話が野見漁協の西山組合長からあったのは6月でした。
ズワイガニが大量発生だなんて夢みたいな話かと思いきや、お話をよく伺ってみるとそこには夢どころか悪夢みたいな現実が広がっていました。
そもそも北海道のものを高知かわうそ市場で販売するのか?という議論もあり、夏場は一度掲載を見合わせていたのですが、9月になっても状況が全く改善しないということで再度ご相談をいただき、今回の掲載に至りました。
現地の漁師さんにもかわうそ市場にも話をくれた西山さんにもそれぞれの思いがありますが、この記事を読んでいただいたみなさんはそんなに考え過ぎずに、ぜひお気軽に買って食べてみていただきたいなと思います。
カニをこの値段でお腹いっぱい食べられる機会もそうそう無いですし、単純にオオズワイガニはとても美味しいです。
そしてもし良ければ、今度は噴火湾の美味しいカレイやボタンエビをぜひ取り寄せてみてください。
そういえば、せっかくだから高知の食べ方で!と思って伝統料理の「ツガニ汁」風にもしてみました。
オオズワイガニをすりつぶし、エキスを水に溶かし、それを沸かしてモロモロしたものが浮かんできたところを醤油で味を整えて完成です。
めちゃくちゃ美味しいんですが、労力を考えたら普通に茹でて食べる方が良いね、という結論に至りました。
もしやってみたい方は詳しい作り方をお伝えしますのでお問合せください。
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